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2012年3月31日 (土)

バルサは“平凡な強豪”になり下がったのか

 バルサ対ミランという準々決勝屈指のカードは、期待を裏切りスコアレスドローの凡戦に終わった。皮肉なことに株を上げたのはホームで守り切った挑戦者であり、王者は最後まで本来の姿を見せられなかった。チアゴシウバ不在のミランを攻めあぐねた事実は痛恨で、第2戦では誰もが認める最強チームが“平凡な強豪”になり下がったのかどうかが問われよう。


 CLでベスト4へ進出し、セリエAの連覇にも手を掛けたミランは、すでに最低限のノルマは達成済みだ。「元首相」に戻ったオーナーは二兎を追うことを強く強く求めているのだろうが、ホームに王者を迎えての対戦となれば、焦らずしたたかに振る舞う余裕が十分あったはずである。
 むしろ追い込まれていたのはバルサの方で、誰もが最強と認める彼らにはもはや、レアルを下してCLで優勝するしか道がない。レアルのつまずきでわずかに逆転優勝の目が出てきたものの、今シーズンの国内リーグでの戦績は最強と呼ばれるチームに相応しいものではまったくない。一時はレアルとの勝ち点差が10ポイントにまで広がり、主力選手は会見で白旗を掲げざるを得ないと語らざるを得なかった。

 こうした意識の違いが、前半の試合運びには如実に現れた。ミランは失点回避を最優先事項とし、バルサはゴール前に敷かれた守備網に穴を開けるべく、繰り返しアタックを仕掛けていく。ボール支配率には案の定、大差がつき、バルサは実に9本ものシュート(うち枠内4本)を放ったが、それでもゴールを挙げられなかった。一方でミランも4本のシュート(うち枠内2本)を放ち、最低限の反撃を試みる。
 守備の要といえるチアゴシウバとファンボメルがいないミランにとって、前半をスコアレスで乗り切ったことは最上の結果だったに違いない。前半終了間際、ゴール正面でのシュートをふかしてしまったシャビの苦々しい表情は、印象的だった。百戦錬磨のベテランはあの時、ほころびを見せながらも気を抜かずに守るミランの守備陣に対して、いささかの焦りを感じていたのだろう。思えばあの段階から、彼は決めるべき時に決めておかなければならない重要性を十二分に意識していたのだと思う。

 後半はもはや凡戦だった。敵陣でボールを持つ時間は、あるいはミランが上回っていたかもしれない。彼らはセーフティな横パスと、カウンターを防ぐためのえげつないディフェンスに終始し、試合巧者ぶりを見せつけた。試合直後に示されたスタッツでは、バルサの総シュート数が17本(うち枠内5本)だったのに対し、ミランは5本(うち枠内2本)。つまり彼らは、あえて無理にゴールを挙げようとせず、負けない試合に努めたということだろう。ドイツの古豪レバークーゼンを余裕の2連勝で叩き潰してきたバルサにとって、ミランの手堅さはいかにも窮屈だったに違いない。
 アッレグリ率いる今のミランには、ピルロに執着していた頃の面影はまるでない。前線にイブラヒモビッチ、中盤にボアテングとファンボメルを縦に配置するやり方は、何ともマッチョである。その姿はむしろかつてのインテルやチェルシーに重なり、ファンとしては決して好ましくない。この姿を嫌ってバルサ=グアルディオラはイブラを放出したのだろうし、それは大いなる英断だったはずである。

 バルサが最強と呼ばれてきたゆえんは、厚く敷かれた守備網をこじ開け、どんな相手からも点が取れることにあったはずだ。メッシという切り札を持ちながらこれに依存せず、まるでジャグリングをみているようなスピーディーなパスワークを繰り返して、いつの間にか逆サイドにスペースをつくってしまう。カウンターを浴びるリスクを抱えながらもチャレンジする姿勢は守備面でも顕著で、中盤から果敢にボール狩りに行き、絶えず攻め続けることを志向する。そもそも相手にボールを持たせるのがみっともないことなのだ!とでも言いたげに振る舞う姿は、誰にとっても潔いものだったはずである。
 しかしこの日の彼らは、何ら面白みのない平凡な強豪に過ぎなかった。前半こそ何かをなそうとしていたものの、後半は無理をしない戦いに終始していたと言わざるを得ない。パスワークは退屈だったし、後半は選手のオーバーラップも遅くなった。選手個人の能力に依存した攻撃は最後まで決め手を欠き、ボール支配率こそ上回ったとはいえ、選手が走った距離ではむしろミランを上回ってしまった。昨年のアーセナルとのアウェー戦もそうだったが、ミランに対して不要な敬意をみせたということなのかもしれない。それは、我われが王者に期待する姿とはまったく異なっていたはずである。

 カンプノウでの第2戦は、バルサにとって試金石にならざるを得ない。いかに素晴らしいサッカーが「できる」のだとしても、リーグ戦で宿敵レアル(というかモウリーニョか?)に優勝を譲り、CLでもベスト4止まりとなってしまえば、誰しも最強と呼ぶことはためらうだろう。マッチョなミランに勝てないのは、致命的だ。そもそも、CLのグループリーグでも、ホームでのミラン戦は2-2の引き分けに終わっている(アウェーは3-2で勝利)。
 ここしばらく、「戦う前から最強のチームがわかっているのだから、サッカーはつまらなくなった」という思いをずっと抱いてきたのだが、もはや時代は変わったのだろうか。いったいどちらに勝ってほしいのかと問われると、返答に困る。

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高スポ執筆者

  • 荒木又三郎
    高スポ創刊者にして主筆。ACミランを愛する後天性フランス人。高スポ編集雑記に本音をぶちまける。
  • 三鷹牛蔵
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