« 橋本晃司がキングになった日 | トップページ | 湘南と甲府の違いは忍耐力、こらえ性 »

2012年4月29日 (日)

ティム・ダンカンは優勝リングを増やせるか(2012年版)

 今年もこの記事を書くとは思わなかった。昨年は「これがラストチャンス」と思いながら記事を書いていたのだが、いやいや、今季もサンアントニオ・スパーズにはチャンスがありそうだ。

 サンアントニオ・スパーズの「王朝」を支えたビッグ3、とりわけティム・ダンカンにかつてのような支配力がなくなったことが話の始まりだ。
 それを補いながらレギュラーシーズンを快調にぶっとばしてウェスタン・カンファレンス1位となりながら、プレーオフでは8位のメンフィス・グリズリーズを相手に敗退したというのが昨季の出来事だ。

 敗退の原因は、インサイドの劣勢だとか、ザック・ランドルフの神がかり的な活躍だとか、マヌ・ジノビリの故障からの不振だとか、ジノビリを封じ込んだトニー・アレンのディフェンスだとか、スパーズのコンディション不良だとか、いろいろと挙げられるのだけれど、突き詰めればダンカンに代わるエースがいなかったということだ。
 そのことは事前にわかってチーム作りをしていたのだが、結果が出なかった。1年経てばダンカンもジノビリもさらに歳をとるわけで、絶対的なエースの不在という問題は大きくなる一方だ。したがって、ダンカン・ジノビリ・パーカーの「ビッグ3体制」ではもう優勝は難しいだろうと、私は判断していた。

 シーズンオフには、スパーズは大きくは動かなかった。
 唯一大きな動きは、ジョージ・ヒルの放出とT・J・フォードの獲得だ。若くて安くて当てにできるジョージ・ヒルはトニー・パーカーのバックアップを任せられる選手なので、放出は意外だった。個人的には、高額年俸のパーカーが元嫁の希望通り大都会に移籍するというのなら、ジョージ・ヒルを中心に据えればいいと考えていた。ボストンのラジョン・ロンドのように「ビッグ3+1」のような存在になれると思っていた。フォードは実績のある好選手なのでプラス・マイナス=ゼロではあろうが。
 問題だったのはベテランセンター、アントニオ・マクダイスの去就だった。昨季終了直後に引退を示唆したのだが、その後「やっぱり現役続行→やっぱり引退」と推移した。結局、ただでさえ手薄なインサイドの補強はなし。まあ、スパーズが欲しいような7フッターがそう簡単に手に入るわけもないけれど。

 トータルで見ると、緩やかに戦力を落としてのシーズンインだと思われたのだ。ファンの私ですら、スパーズフロント、コーチ陣を侮ってたということだ。
 そもそもジョージ・ヒルの放出はタダではなかった。見返りとして全体1巡目15位指名のカウィ・レオナルド、42位指名のラトビア人選手、2005年にドラフトされたスロベニア人のエラゼン・ローベック(CSKAモスクワ)の権利を得ている。もちろん本命はレオナルドで、201cmの大型SGとして使われている。ディフェンスに見るべきところがあり、いかにもポポビッチが使いたがる選手だ。
 また、2年目の選手たちがしっかりと成長を見せている。シューターのダニエル・グリーンと、スパーズの次代を担うことが期待されるティアゴ・スプリッターだ。

 スパーズのチーム成績は、シーズン序盤は並だったが徐々にペースを上げていった。これに気をよくしたのか、3月にはスパーズフロントは動いた。
 期待ほどには機能していなかったリチャード・ジェファーソンを遂にトレード要員にしてスティーブン・ジャクソンを獲得。ボブキャッツから放出されたボリス・ディオウをゲット。急遽引退を表明したフォードの後釜として、ロックアウト中に中国に行ってFAになっていたオーストラリア人PGパティ・ミルズと契約。
 あれよあれよという間にチームの層が一気に厚くなった。そして現在のロスターを見ると、主力選手は次のとおり。

PG:パーカー、ミルズ、ゲイリー・ニール
SG:ジノビリ、グリーン、ジェームズ・アンダーソン
SF:レオナルド、ジャクソン
PF:ダンカン、ディオウ、マット・ボナー
C :デュアン・ブレア、スプリッター

 これで13人。ダンカンが、自分のキャリアで最も層が厚いチームと言うのも当然だ。たとえば4月6日のホーネッツ戦では、前半で大差をつけたとはいえ、13人が10分以上プレーして、しかもベンチメンバー5人が2ケタ得点を上げている。

 さて、ここから2012プレーオフの話。
 どんなに選手層が厚くても、プレーオフを勝ち進むのには関係ない、というのがNBAの常識だ。少なくとも今までは。シーズンも押し詰まってお互いの特徴が知れ渡った最後の勝負どころでは、「エース、エース、エース」とエース選手の能力で勝つというのが今までのセオリーだった。
 選手層で勝つという、スパーズの戦略はそれと一線を画すものであり、注目される(宮地さんの記事もそのことを言っている)。これが「未来の戦略」なのか「机上の空論」なのか、それを決めるのは結果だけだ。個人的には「未来の戦略」であって欲しい。「オールスター級の選手を3人集めたチーム」と「スターター級の選手を10人集めたチーム」に対等の価値があると証明できれば、競技の将来にとって良い話だと思うからだ。ビッグシティでなくても優勝の可能性を夢見られるという意味で。

 で、スパーズの対戦相手だが、緒戦のジャズは問題ないはず(ここで負けるなら論ずる価値はない)。次は因縁のグリズリーズかクリッパーズ。たぶん勝てる。去年とは違うぜ!
 問題となるのはカンファレンス・ファイナルだろう。今季大躍進したオクラホマシティ・サンダーに関しては、エースのケヴィン・デュラントにはそこそこやられるだろうが、昨年のダラスがやったようにウェストブルック潰しがカギになるだろう。たぶん、それは可能だ。だから勝算はある。
 どちらかというとLAレイカーズを恐れている。コービー・ブライアントはもちろん脅威だが、それ以上にアンドリュー・バイナムとパウ・ガソルのフロント陣が問題だ。いつぞやのようにバイナムに30リバウンドも取られてはいけない。これに対抗するために、スプリッターのプレーが注目されるだろう。
 イーストに関しては、たぶんマイアミ・ヒートが勝ち上がるだろう。「オールスター級の選手を3人集めたチーム」の代表格であるので、ここでスパーズが勝てば潮流が変わる。期待したい。

※ちなみに日本のJBLでは、トヨタ自動車アルバルクが「スターター級の選手を10人集めたチーム」として優勝した。ただし、NBAと違って連日ゲームを行うし、ライバルチームとの力の差があるので、戦略の変化を論じる材料としては弱い。

« 橋本晃司がキングになった日 | トップページ | 湘南と甲府の違いは忍耐力、こらえ性 »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ティム・ダンカンは優勝リングを増やせるか(2012年版):

« 橋本晃司がキングになった日 | トップページ | 湘南と甲府の違いは忍耐力、こらえ性 »

高スポ執筆者

  • 荒木又三郎
    高スポ創刊者にして主筆。ACミランを愛する後天性フランス人。高スポ編集雑記に本音をぶちまける。
  • 三鷹牛蔵
    高スポの陰の支配者。湘南ベルマーレを愛する先天性ジャパニーズ。

姉妹ブログ


三鷹牛蔵twitter

無料ブログはココログ