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2012年5月 6日 (日)

湘南と甲府の違いは忍耐力、こらえ性

 湘南側からすると見どころの多いゲームだった。たとえば辛抱の価値を教える教材になるような内容も含んでいた。いや、湘南が1人少なくなった後で守りきったからではなく。
(2012年5日3日 湘南ベルマーレ1―1ヴァンフォーレ甲府 ShonanBMWスタジアム平塚)

 湘南は前節でのターンオーバーもしくは「ラボ」を終えて「いつものメンバー」に戻った3-4-2-1。GKは阿部伸行。3バックは右から鎌田翔雅、遠藤航、大野和成。2ボランチはハングギョンと永木亮太。右WBに古林将太と左WBは高山薫。馬場賢治の1トップに、2シャドウは古橋達弥と菊池大介。
 甲府も同じように「元に戻した」印象の4-2-2-2。GKは荻晃太。4バックは右から福田健介、ドウグラス、山本英臣、佐々木翔。2ボランチは伊藤輝悦と保坂一成。右SHが柏好文で左SHがピンバ。2トップはダヴィと高崎寛之。

 甲府の力の源泉はデカくて強いJ2屈指の2トップで、高さで劣る湘南の3バックからすると戦前から脅威だった。さらに甲府はサイドハーフの攻撃力を加えることで圧倒してくる。この日は右SHの柏が再三ドリブル突破からクロスを入れており、開始間もない時間に柏のクロスを高崎が合わせた辺りからペースをつかんだ。
 湘南は前線でボールをキープできないこともあって防戦一方となっていた。前半の10分頃から25分頃までは、いつ失点しても不思議はなく、反撃の糸口も見いだせなかった。この時間帯に失点しなかったことがゲームのポイントで、39分の湘南の先制ゴールにつながった。

 両チームには忍耐力の差があった。甲府のボール回しに対して、湘南の選手達は順繰りに圧力をかけようと奔走して耐えていた。この対応を前にして甲府の選手が先に根負けしたと思う。
 23分頃、湘南のDFラインの前でボールを受けた高崎がミドルシュートを放ったときに「焦れたな」と感じた。ポゼッションは圧倒的に甲府だったのだから、丹念にボールを回してチャンスを窺われるほうが湘南にとっては嫌だった。なんなら一旦GKまでボールを戻してもよかったくらいだ。
 高崎にはシュートを撃つだけのスペースと時間があったわけで、後で映像を見たらシュートを撃てる時に撃つというのも、あながち悪い選択ではなかったとも思える。ただ、チャンスをより広げる選択肢もあったし、現地で感じた空気は「あそこで簡単に撃ってくれると助かる」というものだったのだ。客観的に見れば、流れを決定的に変えたのは高崎のシュートではなく、その後のピンバのロングシュートだったのかもしれない。湘南の守備ブロックの外側から撃った、極めて可能性の低いシュートだったから。

 ゲームのほとんどの時間帯を甲府が支配していて、シュート数で見ても9対18という差だったのだが、甲府の得点は1点だった。9本のシュートを撃ちながら1ゴールに終わった高崎も城福浩監督も、決定力やフィニッシュの精度について言及していたようだが、問題はそこなのだろうか?
 プレーの選択であったり、その前段にある忍耐だったり、ボールに触れないとイライラするエースだったり、そういった所を見直すべきなんじゃないかと感じた。まあ、私はこの1試合しか見ていないが、彼らはここ数試合の停滞について総合的に言及しているので、そういうスタンスの違いなのかもしれないけど。

 ともあれ、甲府がペースを手放して湘南に流れが来た。その短い時間帯に1点奪ったことは評価できる。
 前線に飛び出そうとした高山へのパスがカットされたものの、それを拾った馬場が右脚アウトサイドにかけたシュートを無人のゴールに流し込んだ。「右バッターの外角からストライクゾーンに入ってくるシュート」って感じの素晴らしいコントロールだった(甲府のGKが飛び出したという判断にも問題はあったかも)。
 その直前にも、古林のアーリークロスに古橋が走り込んだシーンがあったが、チャンスはこの2つだけだった。

 後半開始後も甲府ペースであり、52分に同点とされると、湘南ベンチはテコ入れに動いた。
 54分に古橋を下げて島村毅を投入。3バックを「鎌田、遠藤、島村」にしたうえで、大野をWBの位置に、高山をシャドウの位置に、それぞれ上げた。高山が守備に引っ張られていたことを嫌ったように見える。
 次に、鎌田と島村の位置を入れ替えることで、甲府のターゲットマンである高崎に対して高さのある島村をぶつけた。
 さらに、フォーメーションを4-4-2のような形に変形。4バックは右から島村、遠藤、大野、鎌田と並べた。この辺りで「分厚い攻撃」を断念したように見える。右WBだった古林に代えて坂本紘司を投入して2トップのキープ力向上を意図し、菊池を右SHに下げた。

 ところが80分に大野が2枚目のイエローカードをもらって退場する。
 そこで今度は、馬場に代えて山口貴弘を投入して大野の代役とする。4-4-1のような格好で、坂本が「1」のポジション。プレッシングの始動は自陣に入ってからにして、奪ったボールは坂本がなんとかキープして2列目以降からの飛び出しを狙う、完全カウンター仕様に。
 この時間帯は高山が素晴らしいプレーをしていた。1人少ない状況だったので、あれだけ上下動して独力で仕掛けられてシュートを撃てると、大変助かる。テレビ桟敷的には切れ込んでミドルを放った時に解説の菅野氏が思わず「やった」と口にしたので全部持って行かれたような気もするが。

 後半の湘南のベンチワークと選手たちの対応は見ごたえがあった。彼らが標榜するようなオープンなサッカーから、徐々にクローズドなサッカーに切り替えていった。それでいてカウンターになるとDFラインの選手までもが最前線に飛び出していく様は、若々しいんだか老練なんだか、判断に迷う。勝ち越しを許さなかったという結果はともかく、なかなか見事だった。
 本当はこの後半の細かなギアチェンジ(甲府側の対応も含め)こそが、このゲームの主題にふさわしい。だけど、それも前半を無失点で終えられたからこそであるし、前半の湘南の辛抱があればこそである。

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高スポ執筆者

  • 荒木又三郎
    高スポ創刊者にして主筆。ACミランを愛する後天性フランス人。高スポ編集雑記に本音をぶちまける。
  • 三鷹牛蔵
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