湘南の現状を打開するスナイパー募集中
慎重というか、思い切りに欠けるゲームだった。昇格のかかった終盤戦で心理面での壁に当たっているのは間違いないのだが、メンタルゲームの話をするのは面白くない。
(2012年10日7日 湘南ベルマーレ0―0愛媛FC ShonanBMWスタジアム平塚)
面白くはないが、整理しておく。
9月14日の33節・草津戦がリーグ戦のラスト10ゲームというところだったが、このゲームに勝って湘南は2位。1位甲府との勝点差が4、3位大分との差が5となった。ここでメンタルゲームが始まったと思う。
9月17日の34節・岡山戦は、よそいき4バックで試合を始めたことが裏目に出て早々に失点。前半途中で慌てて3バックに戻したがアディショナルタイムに決定的な3点目を喫した。後半はゲームを支配したが1点止まり。4バックの採用は非難されても仕方がないのだが、選手のコンディションのことがわからないので判断に困る。
9月23日の35節・岐阜戦は、開始早々に相手のロングボールの処理時に遠藤航が身体を入れ替えられてレッドカード&PK献上でリードを奪われる。1人少ないながらも果敢に攻めて2度追いついたが、大野和成が1点目と同じように身体を入れられてそこから3点目を奪われて敗戦。
9月30日の36節・熊本戦は台風で翌日に順延。同点で迎えた後半ATに混戦からボールをつかんだGK阿部伸行が焦ってボランチ下村東美に転がしたボールを奪われてそこから突き放される(ロンドン五輪メキシコ戦の権田&扇原のプレーを再現)。
というわけで、この愛媛戦の前の時点で湘南は2位ながら、1位甲府との勝点差は11に開き、3位大分および4位京都との勝点差は2(京都は台風で1試合未消化)となっていた。京都には追いつかれたも同然で、確保しつつあった自動昇格の権利は誰のものでもなくなった。
若い選手たちの心境は「行けるかも」→「やべ、しくじった」→「取り返さなきゃ」→「大事にいこう」といった感じに推移していたように見える。いずれにしても平常心を失っていたのだと思われる。グラグラ揺れている弥次郎兵衛みたいなもので、元に戻すのは簡単ではない。
愛媛FCは最近3-4-2-1のフォーメーションを敷いている。湘南も3-4-2-1で、なおかつ両チームともWB2人が縦に攻めるタイプの選手である。それゆえ前半はがっぷり四つに組んだゲームであり、お互いに隙を窺う恰好だった。その中でも古林将太のアーリークロスにフリーになったキリノが合わせた場面(当たりが薄かった)とか、キリノが大槻周平にスルーパスを出して相手にカットされた場面とか、少ないながらも惜しい形は作れていた。
後半も同じように辛抱合戦なのかと思ったのだが、選手には焦りが見えた。試合直後の監督インタビューで、ハーフタイムには「我慢しながらボールを動かして、最後ボックスの中に入っていくように」と指示したとのことだったが、後半が始まって早いうちに、前線で3~4人が待ち受けるようになってしまった。
一方でDFラインはやや低かったと思う。ハーフウェイラインよりもやや後ろまでしか上がらず、愛媛の弾頭・有田光希に対して間隔をとって「見る」ような形だった。恐らくは有田を意識していたからであろう、ハングギョンもDFラインと離れないようにしていた。このところの複数失点を受けて、慎重に構えていたのだろう。
そんなわけで後半の50分過ぎには中盤にスペースが空き始めた。いくらなんでも早すぎる。湘南の1人目の選手交代は58分、キリノから坂本紘司。前線で待つ人数が多すぎるので中盤のバランス回復を図ったのだろう。
前線に残されたのは大槻周平だが、この日の大槻は私の見た限りでは、一番良かった。彼の出来云々というより、チーム内で存在感を増していることが伺えた。前線に飛び出す大槻に対してパスが出るようになった。ボックス内でシュートに絡むシーンも増えた。チーム内での信頼度が増したことを受けて、彼自身の責任感も増しているように見えた。失ったボールを奪い返しに行く動きも目立った。
坂本の投入後は、3トップは大槻、菊池大介、永木亮太の3人になった。坂本はハングギョンと2ボランチを形成したが、前目に位置して前線にも駆け上がった。
しかし、あまり改善はしない。愛媛にも何度かチャンスがあった。有田のヘディングを永木がクリアした場面とか、右サイドでフリーになった石井謙伍がクロスを上げた場面(対応すべき高山薫が直前に倒されたが笛は吹かれず)とか。あ、前半に左サイドで伊東俊がはたいて後ろの選手を前に出したシーンも恐かった。とはいえ、愛媛については守備の集中をほめるべきで、攻撃は散発的だった。復帰初戦のハングギョンも効いていたし。
正直なところ、選手たちが警戒するほどには恐くなかったと思う。だから湘南がいつ得点できるかが焦点だったのだけど、決まらない。クロスに偏重しているように思う。86分には右WB古林に替えて岩上祐三を投入したが、この意図は不明。右サイドに砲台を置くのかと思いきや、岩上はちょくちょく中央にも進出した。てっきり、菊池あたりを島村に替えて「島村大作戦」で放り込むのかと思ったのだが。
こういうメンタルゲームの流れだと、DFラインが慎重になるのは致し方ない。これを打開するには技術と落ち着きのあるフィニッシャーの存在がカギになるのだが、それが問題だ。
前回の8試合勝利なしから脱出した際には狙撃手・中村祐也が決めてくれたが、彼は長期離脱中だ。快進撃の立役者で今季の湘南のトップスコアラー・馬場賢治も離脱中。そのうえここにきて古橋達弥が2試合続けてベンチ外だ。さらにさらに、この日のキリノの途中交代が監督コメントのように「足のトラブル」であるというのなら心配だ。
次節は、昇格確定を目前にした甲府が相手だ。蜂の一刺しみたいな感じのゲームが予想されるのだが、彼らの不在は痛手だ。好材料を探すとすれば、愛媛の有田光希だろうか。実際に見てみると、彼は映像よりも厚みがあって、プレイぶりは圧力がある。“ダヴィーニョ”っていう感じなので、彼との対戦は来週に向けての予行演習になったんじゃないかな。
« 取り損ねたタイムアウト・つかみ損ねたアジアのタイトル | トップページ | ヴァンフォーレ甲府はJ1昇格にふさわしい »
« 取り損ねたタイムアウト・つかみ損ねたアジアのタイトル | トップページ | ヴァンフォーレ甲府はJ1昇格にふさわしい »
コメント