宇佐美宏和の起用は公文式?
宇佐美宏和の先発起用、そして3バックの並び順を変えたことがポイントだった。タイガー島村毅の2ゴールに言及すべきなのかもしれないがスルーする。2点ともセットプレーだし。
(2013年8日31日 湘南ベルマーレ3―2ベガルタ仙台 ShonanBMWスタジアム平塚)
右WBのレギュラーである古林将太をベンチ外にした理由は不明である。それはともかく、代役に宇佐美を起用したことが試合前の注目点であった。また、メンバー表においてDFの並び順がいつもと違っていた。
ゲームが始まると、3バックは右から、遠藤航-大野和成-島村毅の順だった。通常のパターンだと、島村-遠藤-大野と並ぶのだけど。
この布陣となると、実質的に4バックになるのではないかと思われた。つまり宇佐美は右サイドバックのようにプレーするのではないか、という予想だが、外れた。最終ラインはあくまでも3人で、宇佐美は右ウイングバックだった。
もう一つの予想としては、攻撃時には遠藤を前に上げて宇佐美が下がることも考えられた。ビルドアップの際に宇佐美が下がってきたので当たりかなと思ったのだが、しかし攻め込んだ時には宇佐美も古林並みに前へと向かっていた。いつもどおりのWBのタスクを課されていたようにも見える。
ただ、開始早々にタッチライン際でトラップミスをしたので古林ほどボールをもらうことはできなかった印象だ。後半のカウンター時に右サイドをフリーで駆け上がったときにも見てもらえなかった。
試合を通じて宇佐美がゴールライン付近からクロスを上げるシーンは5~6回あった。思ったより多いのだが、チームがうまくいっていたからだろう。ファーストプレーの反省を生かしたのか、難しい浮き球はなかった。にもかかわらず効果的なクロスは1本だけだった。強風だったので仕方ない面もあるが、物足りない。
この試合を振り返る番組(Foot!)の中で、後半のカウンターのシーン(宇佐美がグラウンダーのクロスを入れてハングギョンが合わせたシーン)を取り上げてチョウ監督が「2点リードしていようが(宇佐美は)上がらなければならない」と振り返っていた。
奇しくもこの日は岩本輝雄と名良橋晃がゲストとして来場していて、平塚競技場の思い出を聞かれた岩本テルは、鹿島相手に7-0で勝ったゲーム(中田英寿のプロ初ゴールもあった)で「さすがにもうサイドバックは攻め上がらないだろうと思っていたら、なんで上がらないんだとニカノールにガンガンに怒られた」旨のコメントしていた。
これらの発言を無邪気に結びつけるわけにはいかない。1994年の「湘南の暴れん坊」は、岩本・名良橋のサイドバックコンビを解消した後で生まれたものだ。岩本を1列前に上げて、左SBに公文裕明を入れてからのものだ。
このゲームも似たような構図である。高山・古林のWBコンビは今の湘南のウリであるが、守備面での課題も内包していることは間違いない。守備面で信頼できる宇佐美の起用で攻撃偏重を是正できていた可能性がある。1994年の公文と、2013年の宇佐美(ないし亀川)は重なる。
私が初めて宇佐美を認識したのは栃木時代だが、身長こそさほど高くないものの、ボディコンタクトとスピードに優れた良いDFだと感じた。彼の獲得を聞いた時には「鎌田と競わせるんだな」と思ったものだが、この日のようにWBでも起用できるとなると大きい。
スタートから3バックで始める湘南の場合、試合終盤で守り切りたいときの策があまりなかった。甲府のように5-4-1にすることもできるが、単に人を並べて密度を高めるだけではさほど効果的ではないと思っていた。
しかし、右の宇佐美、左の亀川諒史の守備は安心して見ていられるので、たとえ高山・古林のコンビを前面に出すとしても、逃げ切り要員として重宝しそうだ。
もう1つの注目点。遠藤を右に置いたこと。
3点目を生み出したパスといい、菊池大介がGKと1対1になったパスといい、効果覿面だった。いつものように中央にいたのでは、1本のパスでシュートまで持っていくことは難しい(両サイドへのロングフィードやポストプレーヤーへのグラウンダーなどは彼の持ち味だが)。
ただ、今後もこのポジションでいくのかはよくわからない。なんとなく得点機会の演出はおまけという気もする。右サイドの守備のテコ入れという気もする。なにしろ、大一番である甲府との直接対決に敗れたダメージ(私も記事を書く気力がなかった)、柏相手に5失点したショック、その後のゲームである。明言しないまでも、守備のテコ入れを図ったとしても不思議ではないだろう。
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