浦和レッズの6トップ&ステボのこと
ステボについて語らねばならない。名古屋戦でベンチからも外されたが、これは相性の問題だと思いたい。
というわけで1週間以上経ってしまったがレッズ戦を振り返る。
(2013年9日28日 湘南ベルマーレ2―2浦和レッズ ShonanBMWスタジアム平塚)
3-4-2-1のチームどうしの対戦なので、両ウイングバックの位置取りがバロメーターになる。4月の対戦を振り返っても、最近のレッズのゲームを見ても、浦和が押し込んでくるのは十分に予想できた。予想外だったのは攻撃時の槙野智章の位置取りの高さ。左WBの宇賀神友弥と入れ替わったり、宇賀神が中央に入っていってタッチライン際には槙野が上がってきたりした。実質的には6トップみたいだった。
5バック対5トップのマッチアップは、もちろん1つ間違えれば即失点につながる。しかし5トップが前線に張り付くようだと、案外やられないものだ。見た目の劣勢ぶりほどには失点しない。下位チームにとっては悪くない展開ともいえる。だから「5トップがだめなら6トップにすればいいじゃない」というレッズの戦い方は、私からすると、予想の斜め上というやつだった。
浦和の6トップ作戦に直面して、湘南の右WB宇佐美宏和は苦労していた。チームとしても、数的不利を補うために2シャドウの1人が下がるのか、2ボランチの1人が外に出るのか、曖昧に見えた。
とはいえ、徐々に湘南側は対応していた。守備面でもそうだが、それ以上にカウンターの威力を見せつけることで。
攻撃時の浦和は、2ボランチのうち阿部勇樹が最終ラインに入って、3-1-6のようになっていた。湘南の1トップ、ウェリントンに対しては山田暢久と阿部が目を配り、湘南2シャドウ右のキーマン・大竹洋平に対しては1ボランチの鈴木啓太が対応していたようだ。
レッズは那須大亮が出場停止だったので鈴木を先発させたのだが、これに伴ってシステムを変えたらしい。那須・阿部の2ボランチが最終ラインに下りて3バック左右の槙野&森脇良太が開くというのが、前節までの5-0-5だった。このゲームでは森脇はあまり攻め上がらずに残っていた。
その森脇の周辺を湘南は狙っていた。特に2シャドウ左の武富孝介がロングパスを受けるべく飛び出していた。湘南は普段ロングパスでのカウンターを行わないので、これは狙っていたのだと思う。左WBの高山薫が俊足を生かして絡んでいければなおよい、ということだったろう。
武富を使ったカウンターがそれなりに威嚇的だったので面白いゲームになるかなと思ったのだが、18分にCKから浦和が先制。これにはガッカリ。
リードした浦和は、あまり極端に攻めなくなった。湘南の威嚇に配慮したのか、先制したからリスク管理にシフトしたのか、理由はわからない。でも、見ている側からすればどちらでも同じことだ。6トップとの対峙をもっと見てみたかった。
この後は、リードした浦和がカウンターでチャンスを作り出す、まあ普通のゲームになった。
後半は湘南がペースをつかみ、75分にPKで同点、81分にはインターセプトから攻め上がった遠藤航のヘディングで逆転。89分に大竹が退場すると90分に追いつかれて試合終了。ゲーム展開については詳述しない。興梠に抜け出されて追いすがった大野の話とかは割愛。
ステボ(ステヴィッツァ・リスティッチ)について考えたい。
71分に投入されて94分に退いたのだが、私も逆転した段階で「ステボを下げて守れる選手を入れようぜ」と軽口をたたいていた。ステボ本人のプライドを考えれば実行できない策だが、守りきることを優先するならばベストな策だった。
守備面でステボが足枷になっているのは明らかだ。今の湘南は前線のFWにもチェイシングが求められる。するとステボの機動力のなさが目立つ。ウェリントンやキリノと比べると一目瞭然だ。
大竹が退場し、同点に追いつかれたのでようやくステボに対する最低限の言い訳が立ったのだが、チョウ監督にとっては後手を踏んだという思いがあるのだろう。「自分の采配で選手を助けることができたのではないか」というコメントは、そういうことなのだろう。たぶんステボを下げなかったということではなく「大竹を下げることを躊躇した」ということだろう。
大竹とステボの同時起用はディフェンス面でリスクのある策だ。もちろん一方で「3点目を奪う」というシーズンを通じたテーマがあるわけで、逃げ切りサインのような采配はしづらく、そこに葛藤がある。
実際に大竹がドリブル突破でGKの1メートル目前まで迫ったので「あそこで3点目が取れていれば」と言いたくはなるのだが、論理的に考えれば大竹を交替させてよかった。すでにイエローカードをもらっていたというのは考慮せずに。
ウェリントンとステボの2人が前にいてリードしているのなら、アバウトに放り込んで8人がブロックを作るというのも妥当な策だ。引き籠るというのではなく、チャンスには後方の選手も飛び出してくということで。となれば大竹よりも適任の選手がいる。
ステボは攻撃面では魅力的だ。
189cmという高さだけでなく厚みもあってパワフルだ。膝下の振りだけで弾丸シュートを繰り出せる。Kリーグなどでの実績を見ても得点力があることは間違いなく、局地戦には強い。
この日のゲームではステボが投入されると、浦和ベンチは山田暢久をあきらめて永田充を投入した。浦和ファンには評判の悪い交替策らしいが、私は悪くないと思った。山田暢久は巧妙な選手で、この日も前半はウェリントンに上手く対処していたが、後半は抑えられず劣勢の一因になっていた。ステボのパワーを1対1で止めようと思うなら永田投入は悪くない。結果的に逆転されたとはいえ、それは永田一人の問題ではない。
ステボは悩ましい存在だ。湘南のチームコンセプトからすると使いにくいことこのうえない。ビハインドを背負っていて追い上げたいときにしか使えない。対戦相手によって有効度が大きく変わりそうでもある。もっとふさわしいチームに行けば有効に使ってもらえるだろうに(といいつつ、思い当たるチームが挙げにくい。Jリーグ適性の問題か?)。
ただ、見切るのはまだ早いと思う。デビュー戦に比べれば走れるようになったし、コンディションはまだ上がるだろう。欠点も今ほどには目立たなくなるはず。
思い返せば去年のキリノも最初は酷かった。3分でバテていた。それが秋以降はあの通りの活躍だ。ステボだって!
ただし下村東美がベンチにいないのは問題だ。
ステボが「一番初めに話しかけてきた選手」として挙げている下村だが、試合後などに見ていると、いつも新しい外国人選手とコミュニケーションをとっている姿が目につく。昨年は、キリノが欲しいパスを供給していたのも最初は下村ぐらいだった。そのトーミ先生がいないのはステボにとってはアンラッキーだと思う。
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