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2014年1月 1日 (水)

大宮戦の感想というか2013湘南の総括。アジア戦略の挫折

 大宮戦はしょぼいゲームだった。うまくいかなかったシーズンの最終戦らしいとは思う。いったんリセットするためにはそのほうが良いのかもね。
(2013年12日7日 湘南ベルマーレ0―1大宮アルディージャ ShonanBMWスタジアム平塚)

 リーグ戦の最後は6連敗で終わった。すべて1点差の惜敗であることに救いを見てもよいが、降格が決まった後の2試合で株を落としてしまった。前節の広島戦は相手の良さが目立ったのでわかりにくかったが、どちらも低調だったこのゲームでは顕著だった。
 前半は低調なりにそれでも統一感のある試合をすることができていた。しかし後半が始まって10分も経つと運動量が落ち始め、中盤にスペースが空き始める。クロスに対して4人が飛び込んでいくものの、その後ろに人がいないのでセカンドボールが拾えない。相手のカウンターに対して数的同数のようなピンチなのに戻りが遅い。
 下平匠のミドルシュートに対してGKアレックス・サンターナがクロスと決めつけたような妙なポジションをとっていたこともあるが、それ以前にあのエリアでブロックなしでシュートを許すというのが問題である。2010年と違って今季はミドルを撃たせない守備がある程度できていたのだけど、圧力を与えず撃たれてしまった。

 あと岩尾憲の起用法についても触れておかねばなるまい。岩尾を途中から3バック右に入れて亀川諒史を左WBへ、高山薫を2シャドウに玉突きさせて菊池大介をベンチに下げた。
 ポッカリ空いた中盤に新顔を入れて運動量を回復させるとか(梶川諒太)、撃ち合い上等で最終ラインにマッチョ系DFを入れるとか(宇佐美宏和)、そういう予想をしていたのだけど外れた。岩尾には最終ラインからのフィードが期待されたのだと思われる。それ以外の理由は考えつかないのだけど、その期待に応えられたとは言い難い(前節は4バックのCBとして先発しており、同様の印象をもった)。まさか放り込み用の砲台じゃないだろう(投入は失点前だったし)。

 降格チームなのだ。最終戦がしょぼいのはよくあることだ。
 もちろん遠藤航の欠場も影響しているだろが、それだけではなく降格が決まったことによる落胆が漂っていたかな。ビハインドを背負ってからの攻撃に迫力が出ず、やや淡泊な印象だったのは、そう理解したほうがしっくりくる。
 逆にいえば、降格が確定するまでが出来が良すぎたともいえる。普通、降格が濃厚なチームにはもっと焦燥感とか空回りがあるものだ。それをあまり感じなかった。勝点の状況(の苦しさ)にかかわらず、目前のゲームに集中していたように見えた。残留するか降格するかにかかわらず「湘南スタイル」を貫く、追求する、ことに専心できていたわけで、これは特筆すべきことだ。

 それに対して「残留という最優先目標をないがしろにしていた」「ロマンを優先した」といった批判も聞こえる。誤解されているようだ。
 「スタイルを貫く」というから硬直的で猪突猛進、玉砕覚悟、万歳突撃なイメージを持たれているようなのだが、そんなことはない。「失点してもそれ以上得点すればよい」的な攻撃偏重を目指していたのではなく、失点せずに得点するために局面局面で適切な判断をすることが求められていたのであり、「前へ行け」とは言っても、それで失点しそうなら自制することも選手が自分で判断することが求められていた。
 チームのフィロソフィーをまとめた冊子のタイトルを「縦の美学」という陶酔的なものにしてしまうフロントスタッフを私は危惧していて、そこに着目されると誤解されるのも無理はないのだけど(ちなみに「縦の美学」は未読)。

 今季はヴァンフォーレ甲府が、城福監督が、対照的なやり方で残留を果たしたので比較されるのも無理はないのだけど、甲府と湘南ではクラブの立ち位置も、ここに至るいきさつも違う。
 念のために言っておくと、この2シーズンの甲府が成し遂げたことは立派だ。あの勝点への執着は称賛に値する。9月の湘南戦で見せた、途中投入の水野を引っ込めて津田投入で6バックで逃げ切る試合運びなんて、舌を巻いた。
 本当は攻撃的にやりたいけど勝点獲得を優先して我慢した、といった城福監督のコメントを引き合いにして「湘南だって同じようにすべきだったのでは」「資金力のない下位チームのやることじゃない」「Jリーグは下位チームが『なんちゃってポゼッション』をしたがる。やれやれ」などの論評がなされるようなのだけど、そういう一般論はピンとこない。

 そもそもの話、甲府は湘南と比べると金満クラブだ。甲府が守備を固めてどうにかできたのは、前線に1人や2人でなんとかできる選手を置けたという事情も見逃せない。ダヴィ、フェルナンジーニョ、パトリック、ジウシーニョといった面々を次々と連れてこられたのは、先立つものがあってこそだ(編成の工夫もあったとはいえ)。
 それ以上に大きいのは、湘南の方向性を決めているのは2010年シーズンの反省だということだ(トラウマといってもよい)。引いて守ることが基盤だったはずが、中心選手の負傷離脱が連発したとはいえ、大崩壊を来した。ゴール前で跳ね返すことを最後の砦と考えていたのに、肝心のジャーンが故障すると代役はおらず、しかもバイタルからのミドルシュートの精度でJ1レベルを痛感させられた。今だから正直に認められるが、攻撃面も含めて「何もできなかった」。対戦相手への対応に追われた割にリターンは乏しかった。
 ということで、「前へ出る」ことを志すことになった。全員守備・全員攻撃というと平凡に聞こえるが、機動力をストロングポイントにするということだ。資金的に実現可能なプランの一つということもある。

 そういったコンテクストが前提にあるので、基本戦略、総論の部分に関しては湘南ベルマーレをめぐるステークホルダーが概ね諒解していると思う。
 とはいえ、各論レベルでは是非を論じるべきだし、私だって疑問に思ったことはある。
 私が問題視しているのはシーズン序盤の出遅れだ。昇格チームにとって序盤が重要ということもあるし、清水や川崎や鳥栖といった対戦相手が苦しんでいたのに付け込めなかったことも残念だった。「J1のレベルに対する戸惑い」という言い方がされていたが、それが本当なのかは疑問だ。
 かなりの走り込みをしたというコンフェデ休み明けになってから走力を発揮した善戦が増えたのは見逃せない。これによってむしろ、シーズン前の準備に失敗したことが浮き彫りになった。
 
 タイキャンプが問題だ。2010年、2011年、2013年と3度目になるが、シーズン前にタイでキャンプを行ったときは成績が振るわない(2011年は震災の影響で3月中旬からゲームがなく実証できていないが)。「多くのゲームをこなす」ことに問題があるのか、2月上旬に暖かい土地にいることで身体的な準備が整ったような錯覚を招くのか、日本に戻った後の寒暖差でコンディションを崩すのか、理由はわからないが結果は明らかだ。
 タイでキャンプを行った理由は、かつてタイ国際航空がスポンサーだった縁もあるだろうし、単純に費用が安上がりということもあるのかもしれないが、より大きな戦略に基づいている。

 そう「湘南のアジア戦略」だ。キャンプを行って現地のチームとゲームを行うだけでなく、2013年にはタイのチームからエジバウドを獲得した(彼の前所属チームともゲームを行った)。
 結果として失敗に終わったが、筋としては悪くなかったはずなのだ。ベトナムの至宝がJ2で見せたパフォーマンスを考えると、東南アジア現地の選手をJ1に連れてくるのは無茶だろう。東南アジアのクラブからボリビア代表選手を連れてくるというのはリスクを軽減するという意図がわかる。
 ただまあ、エジバウドが不発だったから失敗、という総括でもよいのだけど、仮にプレーヤーとしてのエジバウドが成功したとしても、アジア戦略という面では小さな成功にしかならなかったろう。リターンが少ないということだ。ローリスク・ローリターン。腰の引けたアジア戦略。・・・なかなか難しいな。

 とか、最終節から1か月もかかって書いていたら、2014年はトルコキャンプだって。大倉GMの東欧回帰が始まるの? ってことはなんだ、オレのステボは残留なのか?

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高スポ執筆者

  • 荒木又三郎
    高スポ創刊者にして主筆。ACミランを愛する後天性フランス人。高スポ編集雑記に本音をぶちまける。
  • 三鷹牛蔵
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