怪人アビスパンの巨大モンガーウォールを撃破!
このところ湘南のゲームは面白い。その理由は対戦相手のテンションが高いから。対戦相手はどこも湘南の連勝を止めようと意気込んでくる。もちろん湘南がそれに屈するわけではないから白熱する。
(2014年5日18日 湘南ベルマーレ2―0アビスパ福岡 ShonanBMWスタジアム平塚)
福岡の布陣は3-3-2-2。3バックではあるけれど、両WBの位置が低く、実質的に5バックだった。4バックで臨むゲームが多い中にあってこの日は、193㎝のイ・グァンソン、185㎝の古賀正紘、179㎝の堤俊輔とCBを3人並べた。左WBに阿部巧、右WBは城後寿。アンカーに武田英二郎、中原秀人と石津大介が2列目。2トップは酒井宣福と坂田大輔だが坂田は頻繁に下がって守備を助けていた。
ポイントの一つは福岡山脈。あれだけの高さだと威力になる。ウェリントン(と大槻周平)も空中戦では苦戦していた。CB陣を中心に跳ね返し続けていた。要所要所で前線の選手も飛び出してプレスをかけていたし、集中していたという表現が適切だった。
そしてもう一つのポイントが城後のWB起用。たぶん賛否の分かれるところだろう。
3バックを採用した時点で、福岡からすれば守備の時間が長くなることを想定していたはず。両WBが押し込まれるのはもちろん、中盤の選手も低い位置に押しやられて、実質的に5-2-2-1になることは想定できたはず。というより、そうやってゴール前の密度を高めて守って湘南の選手を誘い出してカウンターの効力を高めるというのが福岡の戦略だったのだろう。
それはそれで筋が通っているのだが、しかし、チームで一番のユーティリティ・プレーヤーである城後をWB起用する意図はよくわからない。少ない人数のカウンターで得点したいのであれば、城後こそ適任なのではないか。
城後はディフェンスで頑張っていた。湘南の左サイドの菊地大介&三竿雄斗のコンビプレーにも絶妙のタイミングで切り替えて対応していた。それは素晴らしかった。だけど、オーバーラップもめったにしないし、城後の持ち腐れという印象だった。攻撃への貢献を求めずに守るだけなら、ほかに守備専の選手はいないのか?
あえて福岡ベンチの意図を推測するならば、城後にはロングフィードを期待していたのかなと思う。ゴールキックの際に城後が下がって行ってショートパスを受け、そこから攻撃を開始するシーンが多発していたが、あわよくばロングパス1本でチャンスを作りたかったのか。実際、守備をしながら奪ったボールを即前線に蹴り出すときにも、城後のキックには可能性が見えた。
湘南について。
前半のうちに先制しておけば、と言えるが、見た目ほどチャンスの数は多くなかったと思う。開始早々の大槻のボレーと、同じく大槻が倒れ込んだ状態で蹴ったシュートの2本だけがまともなチャンスだったと思っている(倒れ込んだのは武富だと思っていて、大槻だとわかってからは「じゃあしょうがない」と納得してしまった)。
どう表現したらよいのかなと思っていたら、監督コメントでその事情が語られていた。「試合前に出した指示があんまり良くなくて、選手は本来ならステップバイステップで上がっていかなければいけないところを、一足飛びで上がらせるようなプレーをさせてしまい」。ワールドカップの代表発表を受けて、お前たちも目指せ、的なことを言ったらしい。なるほど、それであんな感じだったのね。
引き分け上等なアビスパのペナルティエリア固めをこじ開けられずにいた湘南だが、打開策は論理的だった。
丹念にボールを左右に振ってからリターンを中央に戻して隙間をつくろうとしたり、エリア内でドリブルを仕掛けたりしていた。藤田征也の良質クロスを前に跳ね返すのは難しいのでゴールに繋がらないとしてもリスクは少ない。短気を起こしてミドルを狙い、跳ね返ったところからカウンターを食らうのが最も避けるべきところだけど、それでも威嚇的なミドルもあってよかったとは思うけど。
交替策もロジカルだった。まず武富から岡田翔平に替えて前線に一瞬のスピードをもたらす。藤田から岩尾憲への交代には驚いたが、ボランチの辺りにかかる圧力も減っていたし、岩尾のキック精度に期待するのは妥当だった。そして3人目がフィジカル大槻に替えてテクニシャンの吉濱遼平。「あとは決めるだけ」というゲームにふさわしい交替策だった(祐也がいれば…)。
その吉濱が2ゴールを決めた。詳細は略。
このところ、苦しみながらも最後は勝つというヒーローサッカーが続いている。敵の怪人が工夫を凝らして立ち向かってくるので、見どころがあって面白い。まあ大量得点で鎧袖一触の大正義サッカーでも別にいいんだけどね。
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