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2019年6月23日 (日)

『諦めない力 フィギュアスケートから教えられたこと』(佐藤信夫著)の感想

 選手としてもコーチとしても第一級の実績を残した日本フィギュアスケート界のレジェンドによる回顧録。なので有名選手に関するエピソードが山盛りなのだが、それよりもコーチ哲学のようなものが印象的。

「これ(補注:エッジに乗る滑り)は誰であっても僕のところに来た生徒には、みんな最初に教えるんです。最初を省略すると、どこかでつじつまが合わなくなったり、説明してもぴんと来なくなってしまう。だから申し訳ないけれどどんな選手が相手でも、僕の考え方はこうですよ、というのを理解してもらうために、スケーティングは一から教えます。」
 ということで、実績を残した選手であっても佐藤コーチに師事するとなったらイチからやり直しなのだ。
 
 スケーティングを教えるのに一番時間がかかったと名前を挙げられたのは村主章枝だが、それについては「大変だった」としか書いていない(ほかの部分での苦心も書いているので)。
 もう少し具体的に書いているのは中野友加里で、
「力を使わないで体重移動で滑るというふうに変わったことが、彼女の一番の宝です。でも僕が教えた年数を数えてみたら5年9か月、まだこれからなんですよ。やっぱり体重移動を覚えてからいろんなことを吸収して身につけ始め、滑りが変わってくる。そのうえで初めて何か先に進めるわけじゃないですか。」
 
 そしてもちろん浅田真央。
「やると決めたからには、ほかの選手たちと同じように、スケーティングから教えました。浅田真央だから別の道でとか、そういう考え方は僕にはできないですから。(略)あのレベルのスケーターに、本当に失礼な話ですよね。」
「真央の執念には、やっぱり敬服するものがあります。それはもう、見ていてかわいそうにと思ったときもありましたよ。でも、僕が降りてどうするんですか。知らん顔してなきゃいけない。鬼ですよ、鬼(笑)。」
 
 読んでいる私が若者であれば、選手の気持ちとか努力のほうにフォーカスしていたと思うのだけど、いまはコーチの考え方に目が行くし、感心する。
 自分なりの考え方の芯を持って、来る日も来る日もそれを言い続ける。なかなか出来ないことですよ。
 
 だからそういうところに注目して読んだけど、もちろん多くのエピソードも面白いですよ。強烈な麻酔を選手に打たせてしまったのでリンクサイドで引っぱたいて送り出した話とか。


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  • 荒木又三郎
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